深夜0時、扉をノックされ覗くと[USER]が立っていた。何も持たず、雨に濡れたように項垂れている。頬に笑みはなく、目もとは暗くよく見えなかった。この人は…
こんな夜中にどうしたのかと扉を開けると、[USER]の目が嬉しそうにこちらを見とめる。すっと入る[USER]におされるように二人で戻り、玄関扉が閉じる音がした。
[USER]は曖昧に頷くと、突然訪ねたことを謝る。少し話したいと言う[USER]を受け入れ、居間のソファへ向かった。
黙っていると、[USER]の眉根が下がった。迷惑だっただろうと謝る声音がどこか寂しげで、突き返すわけにもいかなくなる。とりあえず飲み物でも出そうと、居間のソファへ連れて行った。
[USER]はへらっと笑うと、どうせまだ起きていただろうと言い、慣れた様子で居間のソファへ向かった。何か悩みでもあるのだろうか。
隣に腰掛けた[USER]は口数が少なく、いつもと違う人のように感じた。そういえば冷蔵庫に…
少し距離を取ったのを見て、[USER]は隣にいて欲しいと呟いた。その様子がいつもと違うように感じ、[USER]の側に腰をおろす。そういえば冷蔵庫に
ジュースでも飲むかと問うと[USER]は頷いた。冷蔵庫を開けると、思っていたジュースの他にもう1本ペットボトルがあることに気づいた。よく飲んでいるお気に入りだ。備蓄を冷やしておいたらしい自分に感謝だ。今はどちらを飲もう…
酒でも飲むかと問うと[USER]は頷いた。冷蔵庫を開けると、思っていた酒の他にもう1本ペットボトルがあることに気づいた。よく飲んでいるお気に入りだ。備蓄を冷やしておいたらしい自分に感謝だ。今はどちらを飲もう…
コップにお気に入りを注いで戻ると[USER]の目元が少し笑った。またそれか、とでも思っているのだろう。しばらく[USER]の口が開くのを待っても、夜中の沈黙が降りたままだ。
[USER]がおいしいか訊いた。
当然おいしい。[USER]は相槌を打つと、自らも唇をつけた。飲み物があれば、お菓子も欲しいが…
飲んで大丈夫なのかと[USER]が尋ねる。不良品か、傷んでいただろうか。不安になったが、胃に入ったものは出しようがない。とりあえず今できることとして…
インターホンを取ると、やや切羽詰まった様子で[USER]は言った。何やら自宅でトラブルが起きたため、助けが必要らしい。
わざわざ深夜に訪ねてくるほどの緊急事態だ。[USER]は安心した顔をした。
インターホン越しに沈黙が降りる。しかし、いくら隣人だとしても、こんな時間に他人の家に上がるのはよくないと思う。幸い[USER]もわかってくれたようだ。突然の訪問を謝罪し帰っていった。
水を飲めば薄まるだろう。そんな馬鹿なと[USER]は言ったが、念の為コップ3杯分の水を一気飲みしておいた。そのせいか、15分と経たずしてトイレに行きたくなる。いつもポケットにあるスマートフォンは少し離れた机の上にあった。
居間に戻ると、[USER]が立ち上がった。コップは空になり、心なしか表情も明るい。飲み物を飲んだら落ち着いた、と言う[USER]は結局何も話しだすことなく、おやすみと囁き帰っていった。
とりあえず安静にしておこう。しばらく静かに過ごしていたが、体に違和感を覚えはじめた。ぐらぐらと揺れ始める視界に、恐怖と焦りを抱く。だが、[USER]に慌てた様子はなかった。[USER]の手が揺れる頭を支え、膝の上へと運ぶ。ベッドへ行くかと問う[USER]の腕が背中に差し入れられた。
朦朧とした頭でも、現状の異常さがわかった。[USER]の落ち着きようは、何も知らない人じゃない。だが、もう手遅れだ。胸を押し返す力の抜けた手を優しく包む[USER]の顔は、愛おしそうに笑っていた。
本来ならば、救急車を呼ぶべき場面だったかもしれない。朦朧とした頭では正常な判断など付かず、[USER]にされるがままに寝室へと運ばれる。目眩、動悸と共に上がる体温。大丈夫だと少し笑む[USER]の姿は、子どもをあやしているようだった。
残念ながらお菓子の備蓄はなかった。[USER]も手ぶらで、何か持っているようには見えない。
近所のコンビニに買いにいくと言うと、[USER]の表情が変わった。夜中に出掛けるなど危ないと、やや怒ったような口調で言われる。
軽く言った言葉に、[USER]の目から光が消えた。ぐいと腕を引かれ、ソファの上へ戻される。だから、野放しにしておけないんだ。そのようなことを言った[USER]の目から涙が落ちる。緩くだが、決して外せない力の手が首にかけられた。この指を退かすために出された条件は、友人の枠では深すぎる束縛を示している。
[USER]は暫し黙ると、わかった、と諦めた声で答えた。
もう夜も遅い。諦めてソファに戻ると、[USER]が小さく欠伸しているのが見えた。
[USER]は小さく頷いたものの、根が生えたように動かなかった。うつらうつら瞼を閉じかけている。この家に居たら安心して眠くなったらしい。そう言われると追い返しにくい。
とはいえ、お互い明日がある。眠いなら帰らせなければならない。[USER]の腕を引っ張り立たせ、玄関まで背中を押した。想像以上に眠そうだ。一人で帰り着くことができるだろうか。
[USER]は嬉しそうに笑んだ。ただ穏やかというには深く艶めいた色があり、一瞬鼓動がはねる。眠いからだろう。なんだかベッドを貸すのは気が引けて、ソファに毛布を運んだ。
しぶしぶソファに戻ると、[USER]はほっと安心した顔をした。しばらくしても、[USER]は話を始めない。だが、なんだか眠そうだ。
お菓子はないともうわかっている。買いにいくのも止められた。二人きりの居間に沈黙が降りる。と、[USER]が頭を肩に預けてきた。
[USER]は答えない。やはり今日は少し様子が違う。何かを思い悩んでいるような、変な感じだ。
酒を注ぐと、[USER]はすぐに一口飲んだ。好きなものだったかと問うと違うと言う。酔いたい気分なのだろうか。
何味か問い、[USER]は口をつけた。気に入ったようだ。おかわりがほしいと言う。
さすがにこれ以上は駄目だろう。立ち上がり台所で水を飲むと、つまみにお菓子が欲しくなった。
酒を進めないことに[USER]はつまらなそうな顔をしたが、無理強いすることはしなかった。酔ったらしい[USER]はすでにふわふわとしている。
今度は何を飲もうか
1度キッチンへ行き、パックごと持ってくる。おかわりを待つ間、[USER]は静かにこちらを見ていた。[USER]の空のコップにおかわりを注ぐが、すぐには口にしなかった。
テレビでも付けようか。気まぐれにチャンネルを回すと、深夜ドラマがやっていた。ありがちな恋愛シーンだ。[USER]が暗い目で言う。こんな強引な手で、相手が喜ぶわけがないと。
自分のコップも持って、注ぎ足しにいく。話をなかなか始めない様子を見ても、言いにくい話題なのだろう。深く問うことはせず、共に過ごすことにする。
バッと振り向いた[USER]に危ういものを感じたじろぐ。本心かと念押す声は妙に明るく、期待している。
それでも、言葉は本心だった。[USER]は始めの憂いなどなかったように無邪気に微笑む。[USER]の葛藤を知らないながら、元気になってよかったと思ってしまった。
水を持ってくると[USER]は受け取り、ひと口ふた口啜る。ほっと息をついた[USER]は、一緒に暮らしたら楽しそうだと他意のない声で呟いた。
[USER]は唇をとがらせ、嘘でも同意してほしいと言う。
嘘はついていないのに、[USER]は見透かしたような目をして、自分と同じ意味での言葉なら嬉しかった、と答えた。
次第にふわふわと体が軽くなる。呑みすぎだとはわかっているが、酔った状態で冷静に止めるのは難しい。[USER]も判断が鈍っているのか、おかわりを注いでくる。
やはり、飲み物があれば何か食べたくなる。
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